学童保育の制度確立を-私たちの求める札幌の学童保育

札幌市は国が児童福祉法第6条で定義付けた趣旨で留守家庭児童対策を行おうとするならば、事業としては「専用室」の設置と「専任指導員」の配置をしなければならず、児童会館は使用する施設の一形態とならなければなりません。
札幌市は使用する施設で第6条と第40条を一元化していますが、事業としては、定義付けは異なるものであり、各々が独立した固有のものでなければなりません。
児童福祉法(学童保育:「放課後児童健全育成事業」の法制化)

第2条

「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」

第3条

「児童に福祉を保障するための原理」

第6条の2 第6項

「この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学しているおおむね10歳未満の児童であって、その保護者が労働等により昼夜家庭にいないものに、法令で定める基準に従い、授業の終了後に児童厚生施設等の設置を利用して適切な遊び、及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。」

第21条の11

「市町村は児童の健全な育成に資するため、第6条の2第6項に規定する児童の放課後児童健全育成事業を行うとともに、当該市町村以外の放課後児童育成事業を行うものとの連携を図る等により、当該児童の放課後健全育成事業の促進に努めなければならない。」

第40条

「児童厚生施設は児童遊園、児童館等児童に健全な遊びを与えて、その健康を促進し、または情操をゆたかにすることを目的とする。」

社会福祉事業法第2条の3 次に掲げる事業を第2種社会事業とする
・・・保育所、児童自立生活援助、又は放課後児童健全育成事業・・・

はじめに

現在、札幌市地方社会福祉審議会児童福祉分科会において「札幌市の留守家庭児童対象事業の三形態の在り方及び障害のある子の受け入れについて」の検討が進められています。
すでに、国においては「共働きが一般化してきた、急激に進む少子化現象への対策」として児童福祉法の見直しの中で、学童保育が「放課後児童育成事業」として法文化されました。
厚生省はすでに1991年には今後の社会情勢を見据え、学童保育部分を都市児童健全育成事業にメニューから独立させ、「放課後児童健全育成事業」としてスタートさせていました。今回、更に法律の中で放課後保護者が労働等で家庭にいない子どもたちのための事業を「遊びと生活の場を保障して」と定義付けをし、「放課後児童健全育成事業」として独立させ、法律の中に位置付けしました。
札幌における「すべての子どもたちと一緒に遊びの中で健全育成を」とする行政と、「昼間保護者が家庭にいない子どもたちの生活の場でもある」とする関係者との「役割の位置付け」の違いが、国によって法律で「生活の場」の必要性が明確にされたと言えます。こうしたことから、私達が事業の検討にあたって、これまでの経過をふまえるとともに現在の三形態という到達から改善すべき内容を『提言』としてまとめました。これまでとの大きな違いは下記に記述してある「学童保育の役割と位置付け」で詳しく述べられているように、一般児童と留守家庭児童は、おのずと異なった内容が必要になってくるということで、今後の児童福祉法の中に第6条の2第6項として独立させ、条文になったということです。
このことのご理解をぜひお願いし、この『提言』の内容をご理解いただくとともに、子どもたちの豊かな放課後生活の実現にお力をお貸しいただければと考えます。

学童保育の役割と位置付け

  1. 学童保育は、共働き・母子・父子家庭の小学生を対象とします。
  2. 学童保育は、共働き・母子・父子家庭であることによって固有の援助を必要とする子どもたちが登録して毎日かよってくるところです。(児童福祉法第6条の2第6項)児童会館のように広く一般児童を対象にするところではありません。(児童福祉法第40条)
  3. 学童保育は放課後の生活の場であり、健康や安全の管理など養護を含めた基本的な生活が保障され、あわせて子どもたちの成長段階に見合った適切な働きかけ、援助が行わなければなりません。(児童福祉法第6条の2第6項)
  4. 学童保育は、働くことと子育ての両立のために必要な施設であり、保育所と同様に公共性の高いものです、学童保育を必要とする親から申請があれば、行政はそれに応える公的な責任があります。(児童福祉法第21条の11)
私たちが望む学童保育の内容
学童保育の役割が保障される位置付けとそのための「学童保育事業実施要綱(条例)」をつくること。
  1. 学童保育には、共働き・母子・父子家庭の小学生の放課後(春・夏・冬休み等の休校日は1日)の生活を継続的に保障し、そのことを通して親の働く権利と家庭の生活を守るという役割があります。
  2. 事業はどの形態であっても、市が実施する学童保育事業として位置付け、どの地域に居住しても、市の事業として公平な行政サービスが得られることが基本です。
  3. 1小学校区に最低1ヵ所は設置することが必要です。
  4. 地域的なニーズがある場合は1小学校区に複数であっても認めることが必要です。
子どもたちが放課後、毎日そこへ帰ってきて(休校日には朝から1日)継続した生活をしていく事を考えるとき、そこには信頼できる指導員がいて、仲間集団があり、子どもたち自身が生活の場として受け止め、拠り所となり、毎日、安定した生活がおくれる事が基本です。
一般児童の様に真っ直ぐ家に帰り、遊びに来る子どもたちの活動とは異なる部分があり、次のような内容が必要になります。
  1. 一人ひとりの子どもの健康と安全が守られること。
  2. 帰ってきた子どもたちが、学校であったことを話し、精神的に落ち着けるゆったりした環境があること。
  3. 一人ひとりの子どもたちの遊びや活動・生活への働きかけ、援助があること。
  4. 学校から家庭へ帰るまでの時間と空間の位置することから、その時間帯に家庭で身に付ける生活技術、知識なども学ぶ場となり、そのための活動計画などが保障されること。例えば、おやつを作ったり、食べたり、片付ける活動のほか、休校日中の宿題をする時間の保障など。
  5. 集団での安定した生活が過ごせること。
指導員は専任・常勤でひとつの学童保育に常時複数の配置がされることが必要です。
子どもたちの生活内容を充実させるためにも、指導員の労働条件を改善し、研究内容を充実させ、身分保障がされなければなりません。
  1. 指導員は子どもたちに安定した生活を保障するためにも、一人ひとりの子どもの状況を把握したり学校や家庭とも連絡を取り、適切な援助を行うことが仕事ですから、専門的な知識・技能・経験が求められます。
  2. 指導員の仕事を専門職として位置付けをし、子どもたちを受け入れるための様々な準備や打ち合わせ、それに伴う実務も含め、午前からの仕事として認められることが必要です。
  3. 学童保育の役割を内容に即した自由な研修の機会が保障されなければなりません
父母の協力のもとに、子どもたちの状況と地域の実態に即した創意ある内容をつくり、それぞれの学童保育の自主性が保障されることが必要です。そのためにも父母会との協力、連携が必要不可欠ですので、父母会活動への援助が図られることが必要です。
どのような施設を利用して学童保育事業を行う場合でも、子どもたちの遊びと生活の場を保障するという役割が果たせるような内容を備えた専用の建物又は部屋が必要です。
  1. 児童会館であるならば子どもたちがくつろいだり、指導員がゆっくり子どもたちの話を聞いてあげれることができるような専用室が必要ですし、生活の場に必要な台所設備なども必要です。
  2. 学校の余裕教室を利用する場合も生活の場としての専用室が必要ですし、台所施設、個人ロッカーなども必要です。できれば玄関やトイレを別にするなどして、学校生活の延長感から開放されるような施設になるとより理想的といえます。
  3. 民間の借家を利用する場合でも、いつ立ち退きを求められるかというような不安定な状況を解消し、子どもの人数に見合った広さや生活に耐え得る状況の施設が保障されることが必要です。
障害のある子も入れるよう、施設整備や指導員の可配など条件整備が図られることが必要です。
学童保育には保護者が労働等により昼間家庭にいない小学生1~6年生の児童を対象とします。特に障害のある子の6年生までの入会は緊急に実施されなければなりません。
父母の労働にと労働時間が基本的に保障される開設日・開設時間とすることが必要です。見直しにあたってはこれまで共同学童保育で構築してきた内容を、引き続き発展させることが望まれます。経過措置として、施設の性格、地域の状況(学校と設備の位置、児童数など)を考慮し、現に働いている指導員に不利益が生じないような施策を講じる必要があります。